■ エヲカク ■

2024年03月18日

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2020年07月23日

『ザリガニの鳴くところ』

……にしても今年は延々とよく降るなぁ。湿地の物語を読むにはいいのかもしれないけど。

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にしても人ってなんなのか。

個々それぞれに語り得ぬ/語り尽くせぬ…「人生」としか呼びようのない経緯があって、その乱数まみれの瞬間の積み重ねの上に、やっと今があるんだよね。皆様、人生を大切に(祈

これを読みながら、靴を履いて学校に行けなかった(靴が貴重だったので学校付近までは裸足で道を通っていた)という戦前(の離島)生まれの、今や死につつある父親の人生にちょっと想いを馳せて面倒臭い気分になっている。絶対に他者と折り合うことのない人というのがいる、と、自らの存在をもって示してくれたややこしい人です(結局あれこれ解決せぬまま関係を終えるのだろう、ということがほぼ決定したし、まあそれで良いのだと、ようやく自分にも分かった)。

サバイバル。結果よければ全てよしだが。そこは誰にも知り得ない領域。

今のところ、そんなことを個人的に考えさせるテキスト。こういう物語を書く人がいてくれることがありがたい。読みかけだけど、傑作認定。

『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ著/友廣純訳(早川書房)





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2020年05月02日

本の紹介

本の表紙を紹介するアレがいくつかこちらにも回ってくるのだが、正直なところ、そういうのがちょっと苦手なので…… これでご勘弁ください。

……例えば次の2冊の表紙(と中身のチラ見せ)を紹介してみます。
※いずれもTrolley Booksという出版社から出されたゴリゴリのフォトジャーナリズムです。書籍情報は末尾に置きます。

●先ずは1枚目、表紙。2001年、イラク戦争勃発後、壊滅状態のバグダッドに入ったフォトジャーナリストが、破壊しつくされた市街地の写真屋のラボで見つけて持ち帰ったフィルム。現像したらタリバン兵達の出兵前のポートレイトの大量のネガだった。そのポートレイト集。この青年達も(少年も!)人生にやられたんだよね。……誰が受け取るべき写真だったんだろう。

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●もう一冊もイラク戦争。ただし、こちらは米軍の帰還兵たちのその後を追った本。四肢のどこかを失い、もしくは精神を破壊された青年達の姿を写真に収めることで、問題を突きつけようとしている(マイケル・ムーアがLA Timesで取り上げたこともある)。……誰が受け取ることになる写真なんだろう。

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世のなか本は山ほどあるけど、たとえば(FBのインターフェース的に)分かりやすく、また対比として面白い上記の2冊。いずれもイラク戦争にフォーカスを当てたフォトジャーナリズムの写真集。それぞれの視点から。

視覚的であることを考え写真集を2冊取り上げてみたけど、テキストで記録された本もヤバイのがどっさりある。優れた本は山ほど、ひっそり出てます。ノンフィクションも、フィクションも。

本が大切なのではなく、その内容が大切なのです。だからそれを収める本が媒体として大切である、ということなのだが……。なんでかっていうと、本はデジタルのデータよりもパッケージとしての保存が効くんですよ。

▶ TALIBAN by Thomas Dworzak

▶ PURPLE HEART by Nina Berman
 
 
 
人の頭のなかは未知数だと思う。
 
 
 
※FB上での個人的な本の写真は次のリンクに、たまにUPしててます:



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2019年12月04日

ジェフ・ヴァンダミア『DEAD ASTRONAUTS 』本日出版

日本からも買えます♡

本日出版! Jeff VanderMeer(ジェフ・ヴァンダミア)最新刊『DEAD ASTRONAUTS』! ジャケットを脱ぐと、黒い表紙にブルーメタリックの箔押し、俺の絵を使ってもらってます。自慢です。ページを開けばここにもあそこにも! 見本が届いたから、読みかけの本すべて中断して、読み進めてる。もちろん祝杯あげながら!

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著者曰く:「The most beautiful book I've ever ever seen. Lettering is raised on the cover, the printing on the boards in blue is exquisite. Pink end papers!!! Honestly, you gotta preorder this to get a first edition.」

在米の人は、初版を買いに走るべし。


 
 
【日本語で読めるジェフ・ヴァンダミア】
●サザーン・リーチ三部作
1)全滅領域
2)監視機構
3)世界受容
(以上、早川書房)

●ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書
(フィルムアート社)

<DVD>アナイアレイション(全滅領域)/映画

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2019年11月15日

DEAD ASTRONAUTS by Jeff VanderMeer (ジェフ・ヴァンダミア)/MCD Books

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VERY VERY VERY HAPPY!! 12月に発売されるジェフ・ヴァンダミアの新刊『DEAD ASTRONAUTS(死せる宇宙飛行士)』が、版元であるMCD(Farrar, Straus and Giroux=FSGのインプリント)の編集者/パブリッシャー(発行人)のショーンから届いた。

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「おまえの絵を使うから」と言われていたが、ページを捲りながら、えー! こんなとこにもっっっ!? という感じで絵が細かく散りばめられていて死にそう。

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今日はこれが届いていたのを知っていたので仕事早く切り上げて、それからずーっと、特別なボトル抜いて、祝杯挙げてます。目の前に、本を広げて眺めながら。

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ショーン(Sean McDonald)の作った本で大好きなのは山ほどあるけど(例えばジュノ・ディアスの「オスカー・ワオ〜」とか)、そのショーンと太平洋とアメリカ大陸を隔ててメールのメッセージ交換しながら、俺自身がDEAD ASTRONAUTになってます。

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本書の紹介はコチラ→

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著者のジェフ・ヴァンダミアの本は、現代における幻想文学のキーパーソンのひとりとして、日本では早川書房(Southern Reach Trilogy/三部作)、フィルムアート社、小学館集英社プロダクション、などから出ていますので、ぜひ読んでみてください(ナタリー・ポートマン主演で映画にもなってるよ→『アナイアレイション -全滅領域-』)

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ーー
ショーンとの話は、またいずれ。
とりあえず、ページをめくりながら、呑みつづけます。

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2019年07月09日

映画『新聞記者』プロデューサー河村光庸さんのこと

自画自賛させてもらいます。今、参院選前に封切られて社会現象ともなっている映画『新聞記者』のプロデューサーの河村光庸さん、この人について(作中では、河上光康という仮名)連載中の『SUB-RIGHTS』の第8話で書いてますが、まさに予言かなと思います。でも予言のつもりで書いたので、それで良いんです。

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この第8話『TRAINSPOTTING(トレインスポッティング)』を書いたのは、去年5月。舞台は1998年です。

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今年になって、『新聞記者』という映画が参院選にぶつかるように公開される予定だと知った時、そのプロデューサーが河村さんだと知った時の俺の喜びと興奮を察してください。

俺と河村さんとの出会いは1998年、彼が青山出版社の社長だったときのことです。ダニー・ボイル監督の『トレインスポッティング』の原作小説を出したのが、この河村さんで、彼はしかしその後すぐ、青山出版を人に譲り、自身は新しくアーティストハウスという出版社を立ち上げています。そしてそのなかに立ち上げたアーティストフィルムも、当初からの構想に入っていました。

俺は当時25歳の若造で、出版業界で働くのなら海外の小説/現代文学の仕事しかしたくないと思ってましたが、なにしろマーケットの小さなジャンルなので、相手にしてくれる出版社はそんなに多くなく、でもそのなかで、この河村さんは「よし、やろう!」といつも勇気づけてくれたオッサンでした。もともとが出版業界の人ではなかったせいか、その強引でややもすれば乱暴な仕事ぶりが山師扱いされたりもしていた人で、出版プロパーのオーソドックスな出版人には彼を嫌う人も少なからずいたけど、俺にとっては恩人であり、よき先達といった人です。河村さんから学んだことは非常に多かった。自縄自縛に陥らない、自由で奔放な精神で「コンテンツ」というものを当時から(当初から)捉えていた人でした。

出版とはパンクスピリットだと考えていた当時の俺に、成熟したパンクの姿を当時示してくれたのが河村さんだったし、今こうして改めてその精神を示されて、心の底から感無量です。

以下にリンクを張りますが、この8話には、『新聞記者』を制作した株式会社スターサンズ(STAR SANDS, INC.)のその社名の(かなり面白い)由来を書いています。

ぜひ読んでみてください。

我田引水ですが、知るか。河村さんが一息ついたころ、当時の面々集めてお祝いじゃ! 

河村さん、おめでとうございます!!! ざまーみろ!
 

→ あえて参院選前に公開 映画「新聞記者」はなぜリスクを取ったのか 製作者に聞く
 河村光庸氏(映画「新聞記者」エグゼクティブプロデューサー)

→ 『新聞記者』モデルはリアル政治 河村光庸さん 寺脇研さん 池田香代子の世界を変える100人の働き人 23人目+α

→  SUB-RIGHTS // 08: Trainspotting 
※河村光庸氏=河上光康氏
ぜひ宜しくお願いします。
なぜ、映画『新聞記者』が生まれ得たのか、その背景が少し立体的に感じられるかもしれません。時代とは連綿と続くもので、分断は無理です。

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2019年01月09日

本メモ

長いけど読んで良かった。出版社が書店を殺しているという側面があるのではないかという問題提起や、出版業界が読者を蔑ろにしてきたのではないか、というような反省も。粗製乱造とも(それとなく)。あと書店の利益が薄すぎる点を改めて。……ワープアのリアルを描く目的で書かれた小説の舞台が書店とか(涙

……とはいえ、ルサンチマンに溢れた内容ではなく、むしろその逆。檄。

【講演録】アマゾンと日本の出版流通

http://syuppan.net/?p=1227


出版業界に関する著作や読書論などで知られる永江朗による2016年の講演。Amazonの商法と日本的な出版流通販売の在り方とを対比させつつ、この20年弱のあいだに日本の出版業界がどのような変化と向き合ってきたかについて、また直面し続けている問題について、ちょう独特な日本の出版業界の歴史などにも触れながら永江朗らしく(分かりやすく)語っていて読みやすかった。

猿江商會から出ている『小さな出版社の作り方』の出版直後の講演のようだが、それから2年以上が経った今も事情はたいして変わってない。出版業界とすれば困難な時代だろうが、必然性のあるスクラップ・アンド・ビルドの過渡期に今があるので、僕はこれでいいと思わないでもない。意味あるテキストが人より先に死に絶えるとは考えないから。

このなかで語られているけど、新刊本の書店店頭での命は平均でわずか1週間。……ということは月刊誌よりも店に置かれている時間が短い。

「かつて私は『セゾン文化は何を夢見たか』という本を朝日新聞出版から出したことがあるのですが、書くのに足かけ12年かかりました。12年かけて1週間しか店頭に並ばないというのは、「オレの本はセミか?」と言いたくなります。それくらい本が短命化しています。」

……ミーンミーン宜なるかな。

いったい何のために本があるのか/ものが書かれるのか。
著作権保護期間の問題とも合わせて考えた方がいいね〜

出版業界の自縄自縛。割を食うのは読者と社会。

【宣伝】
『小さな出版社のつくり方』
永江朗
猿江商會(出版社)

……ところで永江朗の正式な肩書ってどうなっているんだろうと思ってWikiをあたったら、上記『小さな出版社のつくり方』が著作のリストに未登録だった。Wikiのエディットできる方、どなたか。
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2018年12月03日

ジョナサン・フランゼン『コレクションズ』

三茶の肉のハナマサで叩き売りしてたプラスチックボトルのボジョレーヌーボーがまあまあ旨い。スニーカーを履きつぶしたので新調したついで。

今更なのはボジョレーヌーボーだけじゃなくてジョナサン・フランゼンの『コレクションズ』もそうなのだが……(2011年の全米図書賞)

アルツハイマーの兆候を見せ始めた夫とアメリカ中西部かどこかの田舎町で暮らす老いた女性が、このクリスマスに三人の子供たちを我が家に呼んで(最後の)ひと時を揃って過ごしたいと奮闘する話だけど、子供たちもそれぞれとっくに大人で、どいつもこいつも「人生」としか言いようのないトラブルにずっぽしはまっていて、どうしようもない。どうしようもなさのディテールがすごい。

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どうしようもない。それだけの話を文庫で1000ページも書くのだが、どこを切っても密度が濃くて、ほんとしょーもない。

しょーもない週末。人生はそれ自体がトラブル。仕方ないので風呂場で散髪。

明日はじゃんけん大会に出るために早起きしなきゃならないのに。




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2018年10月10日

SUB-RIGHTS #10 − CHUMP CHANGE by Don Fante / 『天使はポケットに何も持っていない』ドン・ファンテ

今日はドイツで、フランクフルト・ブックフェアが開幕してます。

田内万里夫 

SUB-RIGHTS 10: 

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『天使はポケットに何も持っていない』

ドン・ファンテ

中川五郎・訳

河出書房新社


10月のどこかの水〜日の5日間で開催されるフランクフルト・ブックフェアですが、その間の参加者/入場者数は延べ30万人とも言われおり、その人数が一同に会して、延々と本の話をしている、おまけに夜な夜なーー大抵は午前3時とか、場合によっては朝方までーー世界各国の出版関係者たちが入り乱れて呑み続ける、といえば狂気の程が伝わるだろうか。本の人々と酒の相性の良さは万国共通らしい(いわずもがなだけど、そうじゃない立派な人たちもたくさんいます)。

夜は天国/日中は地獄、というのが僕のとってのフランクフルトの記憶で、最高に面白い人々が集ってくるからほんと楽しいっちゃ楽しいんだけど、とにかくひたすら消耗しまくる1週間。で、帰国後しばらくは屍です。

大抵フランクフルトに入る前に、先ずロンドンに寄って1週間(長いときは2週間)、イギリスの出版社やエージェントの元を訪ねて回って、ちょう長丁場だからほんと死ぬ。……ロンドンでも呑み続けてるわけだし。もちろん遊びというわけでもないし。


1998年に仕事に就いてから2014年まで毎年欠かさず行き続けて、その後アウルズ・エージェンシーが版権エージェント事業をやめて、もう行かなくても良くなった2015年の秋の、あの信じられないほど晴れ晴れした気分は忘れられない。

とはいえ、あそこには最高の思い出も山盛りで、そこで出会って仲良くなったいろんな国の出版人との友情なんかもものすごく貴重で、今となっては素敵な記憶だけがフィルターされて遺っているので、その縁を大切にしていこう、そうしよう。既にあの世に逝っちゃった人なんかもいるけど……

そんなことを思っていたら、去年、縁あって手伝いをさせてもらってるタトル・モリ・エイジェンシーから誰かの代打として送られて、またあの景色を見ることに。

……ということで、今回はそのブックフェアを舞台に、あのブコウスキーが「神様」と讃えた作家ジョン・ファンテの息子、ダン・ファンテというロクデナシの書いた『CHUMP CHANGE』(邦題「天使はポケットに何も持っていない」中川五郎訳/河出書房新社)。あと、もちろんミラーさんとの思い出話。

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なんというか、筋トレのようなつもりで、というか酔っ払って書いているので、また長いです。
ほんとはもっと絵を描く時間を作らねばなのだが、今はこういう巡り合わせのタイミングなので。 絵よりも文章を書くほうが時間とエネルギー消費する。



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2017年08月22日

『<帰国子女>という日本人』品川亮 著(彩流社)

品川さんの本『<帰国子女>という日本人』(彩流社)、実に様々な感情を喚起されながら読了。こんな複雑な思いを背負って今の品川さんがあったのか、というのが(ちょっとだけですが)著者を知る者としての実感でした。つまり<帰国子女>の持ち得る、特有の複雑さが綴られた一冊でした。

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その複雑な思いを自己分析的に整理しながら、いろいろ相対化しようと試みることで、<帰国子女>という呪詛と立ち向かうような本で、……僕はなんというか、Bluesを感じながら読みました。

特に、まだいろいろと無自覚な少年時代のスナップショットのような記憶は、実にリアルで瑞々しく面白かったです。本格的に日本に居を移した高校生以降、自分の内外に芽生えた摩擦も苦いリアリティでした。ある個人の実体験を通じ、その苦悩や戸惑いのプロセスを共有できる、興味深い読書でした。

先進国、途上国、英語圏、非英語圏、加えて、日本人学校、インターナショナル・スクール、現地校、海外生活をした年齢、帰国後の環境なども含めると、<帰国子女>のバリエーションは実に様々で、相対化するのは非常に困難だろうと思われますが、<帰国子女>達への取材を通じて、そこに一本の筋を通そうという意欲作だった。しかし当事者たちの問題は解決しないだろうという思いが残って、それもまた読書として面白かった。

著者と僕はほぼ同世代(品川さんの方がちょっとだけ歳上)で、2歳〜小2まで、つまり7歳くらいまでの5年間(70年代)、それから小6途中〜中3までの約3年間(80年代)をペルーのリマの「リマ日本人学校(通称リマ校)」で過ごした人。つまり中学を出るまでに計8年間を日本の国外で過ごしたハードコア帰国子女です。その後、90年代には<帰国子女>をこじらせた挙句、大手企業の内定を蹴って渡仏。映像作家になる。その後『スタジオボイス』誌の編集者から編集長を経て、他社に移籍しての書籍編集者を更に経て、今はフリーランス(編集、執筆、映像作家)。

著者が「リマ校」で密度の濃かったであろうと思われる時間を共に過ごした<帰国子女>たちとのその後の交流について、第一章のなかで<「治療集団」的側面を持つ小集団>という箇所で、少年少女たちが青年になり、その過程で形成されていった互助会のようなグループについて書かれており、その必然性・必要性が痛いほど分るような気がして胸に沁みました。

主に10代20代のちょう多感な頃に、僕が発売日を待って読んでいた雑誌の編集に深く関わっていた人と知ったのは後からですが、抑えの効いた社交術の持ち主で、大人っぽく気さくなところもあって、おまけに僕などの目には華々しく映るキャリアの持ち主で、やっぱりすごい人がいるんだなぁと、ご一緒させていただく機会には、なんかそんなことを思いながら嬉しく酒を飲み交わしながら、でも話の端々に、不思議なほどの謙虚さを(いい意味で)感じていた人です。その謙虚さを僕は、僕のようなよくわからないし物も知らない者に対するときの、彼自身の心優しい社交バランスのようなものとして捉えていた向きもあったのですが、本書を読んで、ああ、そればかりではなかったのかもしれないと思い至ったのでした。

つまり、<帰国時子女>であることを宿命付けられた、日本人なのに<異邦人>としての著者の像が、この本を読んだことで浮び上がり、日本という国の、独特なドメスティックな世界を、善きにつけ悪しきにつけ、再確認したのでした。そんなドメスティックな世界に対する警戒心は、考えてみれば、僕にも理解できるものでした。

ちなみに僕はいわゆる<帰国子女>の枠に入らない、ゆるふわな海外経験者(小4〜小5にパリ郊外1年、高校時代のトラブル諸々でオーストラリアのメルボルン郊外で約1年、その後の大学生活で2年くらい)なのですが、非常に共感すること多かったです。

特に幼い頃を(親の都合で)海外で過ごし、その後の拠点が日本となっている人には、いろいろ沁みる一冊だと思いました。

自己肯定感ってなんだろうという思いが、しばらく経って訪れました。

余談かもしれないけど、<ハーフ>という日本人の友人たちにも思いが及んだ。「アイデンティティ」を探し求めていた彼等のうちの数人も、落ち着く先が日本じゃなければ背負う必要のなかったトラブルを抱えていたのではないか、という仮説。そんなうちの一人は、その「アイデンティティ」の問題故に発狂した。まあ両親が日本人の日本育ちの日本人でも発狂するから、なんとも言えないけど。

この本は「すれすれ」のところを感じさせずに書かれているけど、でも「すれすれ」の瞬間も多くあったんだろうなあ。と(厚かましくも)思いました。勇気ある一冊で、少年時代を懐かしく感じることもできて、とても嬉しかったです。

 
 
『〈帰国子女〉という日本人』
品川亮
出版社: 彩流社 (2017/8/4)
ISBN-13: 978-4779170966
→ https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4779170966/
 
 
 
【参考情報】
『H.P.ラヴクラフトのダニッチホラー その他の物語(DVD)』
ジム・オルーク (出演), ミッキー・カーチス (出演), 品川亮 (監督)
→ https://www.amazon.co.jp/dp/B000SKNPSG
 

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2017年06月13日

本の未来を探す旅〜ソウル

アニハセヨ〜( ´ ▽ ` )ノ

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出版ほやほやの『本の未来を探す旅〜ソウル』(内沼晋太郎+綾女欣伸・編著/田中由紀子・写真/朝日出版社)片手にやって来ました初コリア、初ソウル。

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韓国のインディー出版シーンを精力的に取材した本で熱意がすごい。取材する側の熱意もさることながら、取材対象の独立系書店や小規模出版社の胸に秘めたようなパッションが熱い。「もしかしたら韓国の出版業界は日本を先取りしているんじゃないか?」というのが序文にある綾女さんの問題意識。この本を読み、充実した写真を眺める限り、ソウルでは非常にダイナミックな出版活動が、80年代生まれの世代を中心に展開されている模様。「どうしてこんな面白いムーブメントが知られていないのだろう。そこには日本の未来が転がっているかもしれないのに。」とあるので、早速突撃してこようと思います。地下鉄マップ手に入れなければ。その前になにか辛いものを胃に納めねば。

 
『本の未来を探す旅 ソウル』

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2017年05月12日

SUB-RIGHTS 連載開始! (DOTPLACE)

出版系のウェブメディア、DOTPLACEにて、恐れ多くも僕のWEB連載『SUB-RIGHTS』がはじまりました。


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翻訳出版の舞台裏ってどうなってるの? 版権エージェントって誰? 仕事を通じて経験したあれこれを、メモワール形式で振り返ってみたいと思います。お読みいただけますと幸いでございます。


約20年前にたまたま、ほんとにたまたま足を踏み入れることになった版権エージェントの世界で出会った恩師、故ウィリアム・ミラー(William Miller)さんのオマージュできたら良いなと思っています。人生には、人との出会いで思い掛けない素晴らしいこと面白いことが多く生じますが、初めて勤めた版権エージェンシーの社長であったミラーさんとの出会いは、僕の人生にとって最大級の出会いのひとつでした。残念ながら彼は2009年に亡くなってしまいましたが、未だに僕は大小様々な決断をしなければならないときに「ミラーさんだったらなんて言うだろう?」と想像します。するとあの声と眼差しが蘇ってくる。僕がミラーさんの会社に在籍したのは、わずか3年弱という短いあいだでしたが、その後もずっと、折あるごとに顔を合わせ、時には一緒に旅に出ました。なにより本当によく飲み交わし、話をし、多くを学ばせてもらいました……。


この連載を続けながらまたミラーさんとの時間を過ごすことができるのかと思うと、それがなにより嬉しいです。


機会を与えてくださった DOTPLACE編集長の吉田知哉さん、心よりありがとうございます!


それにしても、ますます自分が何屋さんなのか分からなくなって参りました。


今夜は満月です。


#SUBRIGHTS #DOTPLACE 

おそろしや〜!


http://dotplace.jp/




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2017年04月12日

『なぜ働くのか』バリー・シュワルツ著/TED Books/朝日出版社【本日出版】

『なぜ働くのか』バリー・シュワルツ著/TED Books/朝日出版社、いよいよ本日出版です。僕にとっては”初めての訳書”となりますが、身の程知らずな冒険に一歩踏み出してしまったような、落ち着かない気持ちでいます。

「つまり本書は、AI時代における僕たち人間のサバイバルそのものを根源的に問う一冊でもある」解説を快く引き受けてくれたNHK出版の編集者/編集長の松島倫明さんの言葉をいきなり借りるけど、この本の役割を見事に言い当ててくれています。

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僕たち人間の本質は、社会のあり方に応じて形成されるのだとバリー・シュワルツは言っています。つまり、社会制度をデザインすることによって、僕たちは人間はその本質を作り出している。そうであれば、僕たちが人間を、社会をどのように理解(しようと)するのかが、すなわち未来を作ることに繋がるはずです。

9割に近い人々が自分の仕事に疑問や不満を抱いて日々を過ごしているという調査結果が真実ならば、それは僕たち人間が誤った理解のうえに仕事をデザインしてきたからかもしれない。なぜそうなのか? どうすればその現実を動かして行けるのかという可能性が、この本で語られています。

僕たちの考えひとつで社会のあり方が変えられるのだという考えはチャーミングですが、それは反面、僕たち一人ひとりの意識のあり方、働き方によっては社会も世界も変わることはないのだという厳しい問題提起とも言えます。

詳しくは本書に語られていることを、ぜひ読んでみてください。

人々が新たな気持で働きはじめる春という季節にこの本の出版が重なったことは、タイミングとしてパーフェクトだと思います。そして、働き方、仕事のあり方が良くも悪くも世に問われ、もしかしたら難しい未来が待ち受けているのかもしれないと思わされることも少なくないこの時代にこの本が書かれ、そのアイデアが世に放たれるというのは、僕たちの未来にとって無意味なことではないはずです。

『なぜ働くのか』が5作目となる朝日出版社のTED Booksのシリーズ、『テロリストの息子』『平静の技法』『未来をつくる建築100』『恋愛を数学する』、テーマを変えてどれも新しい洞察を与えてくれる本です。ぜひチェックしてください。
【TED Books/朝日出版社】

シリーズのディレクターでありプロデューサーであり編集者、去年は武田砂鉄さんの『紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす』でも世の中に大きな波紋をおこした朝日出版社(第五編集部)の綾女欣伸さんは、本書の解説を書いてくださったNHK出版の松島さんと並んで、「同じ時代に生まれて良かった」と心から尊敬する知性の人で、このような形で一緒に仕事をさせていただけたことが本当に幸運で、まさに僕自身「なぜ働くのか」「なぜ働きたいのか」を自らに問い直す、素晴らしい機会になりました(そして、自分にいったい何ができるのか、という大きな課題を与えられもしました)。そして同じく第五編集部の石塚政行さんの力を借りなければ、とてもじゃないけどこのような仕事を無事に終えることはできませんでした。ありがとうございます。



アマゾンはコチラ!

レビューも大歓迎です。1行でも2行でも、百万語でも。盛り上げていただけたら嬉しいです♪
共に考え、共に生きていきましょう。イエイ。

「なぜ働かないのか」と方々で叱られながら、こんなことをしておりました。








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2017年03月25日

【祝・出版】『今日も、ごはん作らなきゃ のため息がふっとぶ本』

毎朝のように財布や鍵や書類などが見つからず、ため息(と八つ当たり)ばかりの奥さんの新刊『”今日も、ごはん作らなきゃ”のため息がふっとぶ本』ってタイトル長すぎて覚えられないから『〜ふっとぶ本』今日(3月25日)出版されるようです。


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キッチンが便利になるアイテム集めから、肉の焼き方のコツとか、合わせ調味料の相性チャートとか、一週間の献立の考え方とか、下味つけて保存のテクとか、冷蔵、冷凍、煮る焼く揚げる茹でるetc.ほかいろいろ、いわゆる知恵袋的な一冊のようです。


これまでになくPOPなデザインで、見て楽しい本になってる気がしますが、それこそが「めんどくさい」を「楽しいかも」に脳内変換するコツだそうです。すごいですね。


NO FOOD, NO LIFE !!


→以下、なんか壮大な「あとがき」

※ポエムじゃないそうです:

 

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「ごはん作り」は毎日の繰り返し。

そして「食べるもの」をどう選び、どう作るかは、

私たちの考え方、生き方そのものだと思います。


しかし、自分のリソース(=時間、予算、料理技術)は

残念ながら限られているわけで……。

その中から最大限に

「自分にとっておいしいもの」

をひねり出したいというのは、

欲張りですが、でも、切実な願いですよね。


結果、「ごはん作り」の繰り返しが苦痛になってしまっては、

とても豊かな暮らしとは言えません。


ときには外食し、お惣菜を買ったりしながらも、

無理なく楽しく、

そしてできるだけおいしく、

日々の食卓をととのえて暮らせるようになれば、

生活の満足感や充実感はグンと上がることでしょう。


この本は、1ページずつめくるたびに

「おっ!」と楽しい話が出てくるように並べたつもりです。


忘れたころにパラパラとめくって、

「久しぶりに買った野菜を冷凍してみよう」

「今晩の夕食後に、ひとつ煮物をしてみよう」

なんていうように、

「あっ、これ忘れてた!」という

生活の工夫を思い出すきっかけとしていただければ、

これよりうれしいことはありません。


「ごはん? かんたんだよ!」

と自信を持って過ごせるようになれば、そのゆとりは、

仕事や人間関係など日々のいろいろなことにも、

必ず余裕を生み出してくれるものと思います。


料理を楽しみ、自信を持って過ごせることで、

明日も、またさらに素晴らしい1日になりますように。

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→『今日も、ごはん作らなきゃ』のため息がふっとぶ本

田内 しょうこ (著)

発行元:主婦の友インフォス

発売元:主婦の友社 

https://www.amazon.co.jp/dp/4074202220/


……ということで、皆様どうぞよろしくお願い申し上げます。

料理は楽しいよね。

 

#家庭料理 #時短料理 #レシピ #キッチン #料理 #台所 #料理本 #ズボラさん必見 #主婦の友インフォス #主婦の友社 #ふっとぶ本 #今日もごはん作らなきゃのため息がふっとぶ本

 

 

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2017年02月07日

PIMP復刊(間近)!!

「これ読んで分からないヤツは、アイドル見て光る棒でも振ってろ!」と、ハシヅメD先生が言ったとか言わなかったとか(言った)。17年の時を経て、名作の<復刊>です。’40〜'50年台シカゴで、のべ400人以上の娼婦を牛耳った伝説のPIMPアイスバーグ・スリム(ポン引きの親玉みたいな人です)の自伝的小説で、公民権運動の残響のまだまだ残る’67年(マルコムX暗殺は65年、キング牧師暗殺は68年)に、世の中の潮流など嘲笑うかのように出版されると約5年間でじわじわと200万部を売り上げ、その後に興るHIP-HOPに絶大なる影響を与えたカルト・マスターピース。アフリカ系アメリカ人のアンダーグラウンドのリアルを綴った貴重な記録でもあり、ストリートの知恵と暴力を描くことによって、そこから滲み出てくる人間の本質を捉えるに至ったこの『ピンプ』が書かれなければ、その後のHIP-HOPは生まれなかったのではないかとも言われる異端の書です。

※なお、エルロイからウェルシュまで、その後の白人作家達にも幅広く影響を与えた模様。

ぼくは約20年前にこの本と出会い、2001年、大好きな浅尾敦則さんの翻訳で、当時仲の良かった出版社(アーティストハウス)での翻訳出版を実現することができたときには思わず小躍りしたものです。しかしそのアーティストハウスがなくなると同時に、この本も<絶版>となってしまいました。めちゃめちゃもったいない!!! と、ずっと頭の片隅で思い続けてきましたが、なんと去年、DU Booksの編集長・稲葉さんが手を挙げてくれて、あの浅尾さんの名訳のまま(!)念願叶って復刊っ! という流れが生まれたものの、考えてみればぼくは既に版権エージェントの仕事をしておらず、翻訳出版権の契約手続きなどする手段がない!!! ということで、慌ててバイト先の某老舗エージェンシーの助けをお借りして、無事、この3月に復活されることに。

アーティストハウス版では、正直ちょっと微妙な感じだった表紙デザインも一新されることになりそうで、とにかく3月が待ち遠しい。この本を読む人がこれでまた増えるかもしれないと思うと、ほんとわくわくします。お楽しみに!!

→ ギャングスタラップに多大な影響を与えた伝説のピンプの自伝的小説が復刊
(MUSIC 2017.02.05 FNMNL編集部)
http://fnmnl.tv/2017/02/05/21759
 
 
 
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2017年01月31日

フィリップ・K・ディック、まさかな思い出

ディックの『高い城の男』の、最初の翻訳者が、俺の育った実家の裏に住んでいたエキセントリックなジジイだったと今日知った。あの人あそこでそんなことしてたのか。埼玉のど田舎で。

ひどい夫婦喧嘩するジジイだなと、幼い頃に思っていたけど。変人だったんだな。じゃあ仕方ない。。

ジジイは俺がその後ディックを読むとは思っても見なかっただろう。そんな田舎。

雑木林と水田や畑の広がるような。空が広くて、夜は星が明るかった。

あそこでディック訳してたのかよwww  めちゃ近くにいたw

ジジイが翻訳者だということは、翻訳という仕事もよく知らないまま、中学生の頃になんとなく知った。『私のなかの他人』という多重人格者の本を、本棚にあった彼の訳書を読んだからだ。

とにかく怖かった。ホラーのようなジジイだった。

ジジイが泣き叫ぶ奥さんを追いかけてきて、うちで飼っていたうずらの鳥かごの上に押し倒した。籠のうえに押し倒された奥さんを、うずらが飛び上がって、小さな嘴でつついていた。うずらの跳躍力を、俺はその時に知って、あれは感動だった。

まさかあのジジイだったとは。。

うずらも怖かったことだろう。

まともな大人はいなかった。けど、自分が大人の年齢になって、それも仕方ないことなのだと、なんとなく知るに至った。

子供達を怖がらせないようにしないと。。

ちなみに俺の初ディックは多分、スキャナーダークリーのペーパーバックの英語版。あのジジイもきっと同じ本を読んでいたんだな。。アーメン。

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2016年09月26日

Rick Lightstone 訃報

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アムステルダムの一角、Spui に American Book Center(ABC)という素敵な書店があって、Rick Lightstone はその書店のマネージャーをしていた。朝4時台に目覚めると、まず二時間ほど本を読むことを日課にしていると Rick は言っていた。それから一日の支度をはじめ、ABCに行って、オフィスでまた読む。それから仕事に取り掛かる。夜、帰宅して、また読書する。The Band のロビー・ロバートソンの音楽を愛するカナダ人で、アムステルダムの住人だった。はじめてRickと会ったのは確か2007年。Trolley Booksの Gigi がぼくの初めての本のUK版を出版してくれて、その出版イベントをRickが主催してくれたのがきっかけだった。そのGigiも2012年の暮れに若くして亡くなってしまった。ぼくがヨーロッパに行かなくなった2014年の終わりまで、ほぼ毎年、機会があればどこかで顔を合わせるようにしていた。2014年の秋には、またABCのショーウィンドウをぼくの絵で飾らせてもらい、その後そのまま飲みに出かけて、ローカルバンドのライブを見ながら夜が更けた。そのときが最後で、この2年ほどは会う機会が無かったけど、この夏、あるプロジェクトを温めているからSkypeで話したいとメッセージが来て、簡単な遣り取りを交わした。お互いに日々が慌ただしかったのだろうけど、タイミングを逃しているうちに、こんなことになってしまった。かなしい。

こんなことを言うのは柄でもないけど、あの世でRickとGigiが落ち合うようなことがあるなら、酒でも飲んで、いずれまたぼくのことも仲間に加わえて欲しい。

Rickが頭のなかで温めていたというプロジェクトがどのようなものだったのか気になる。どのような最期だったのか知らないが、それも気になる。遠くにいると、あまりにも呆気なくいなくなってしまったように感じる。ぼくもいずれいなくなるのだろから、頭のなかにあることを、まだこの世にいるうちに出してしまわないといけないなと思いながら、いろいろ手につかず、杯を持ち上げている。気の合う人でした。

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2016年09月15日

【朗報】『忙しいママでもできる! 毎日の時短ごはん』― 出ました!

【朗報】世のワーママ(Working Mothers=働くお母さん)のキッチン/食卓を救う、またまた実用性の高い一冊、新刊出ました。「まちとこ」という働くママ達の企画編集グループと、うちの怖〜い奥さんとのコラボ。

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世の働くお母さん達(の多く)がいかに過酷な状況に身をおいているのか、なぜそのような状況が生まれるのか、最近になってやっと、はっきりと飲み込めてきた気がしております。

1)旦那衆が家事を分担しない。
→そもそもその発想に乏しい。
→どこに手が必要なのかすら考えない。

2)ワーママ衆の就労環境が依然厳しい。
→女性の活躍を〜とか言ってる時点で…
→育児中の場合、何をか言わんや状態。

3)ワーママ衆の家事スキルの低さ。
→これ、(自分含め)旦那衆の家事スキル/家事意識の「無さ」と比べれば、「人にあれもこれもやらせておいて、なにを偉そうに言っているんだオマエは…」と、おっかない奥様方のお怒りの声が聞こえてくるような気もするけど、仕方のないことなので、敢えて言います(※ここではキッチンに話を限定)。

そもそもキッチンに立つこともほとんどないまま、学校に通い、塾や予備校にも行き、さらに進学して、就活して、就職して、働いて、残業して、……って、その間ず〜っと親の手料理か、外食か、お惣菜かで過ごしてきた人達が、ある日結婚したり子供を持ったからといって、いきなり料理上手になったりする訳がないんですよ。ママだろうがパパだろうが。勉強ばっかりしてきた人達も、遊びまくってきた人達も、ここは概ね平等です。

場合によっては家庭を持って、はじめて包丁を握るみたいな人が、かなりいるんだなあということが、なんとなく分かってきました。特に、勉強熱心、仕事熱心でやってきた人達ほど、包丁? なにそれ切れんの? というような状況なのは、もう仕方ない。これが現代社会の歪みDA!

子供を抱えて外食もままならず、育児に金かかるし、少しでも安心なもの食べさせたいし、じゃあ自分(達)でやるしかねーなと思っても、……そうこうしているうちに、やばい、仕事に行かなきゃ! 保育園に連れていかなきゃ! 仕事を終えてくたくたになって帰宅して、腹を空かせた雛鳥抱えて、うわ! 晩御飯どーしよう!!! ……となるのはもう、どうにもこうにも仕方ないことなのではないかと思うわけであります。え? 明日お弁当!? きゃー!!!!!

だから、こういう本は必要であると、だから思い当たる人は手にとって見て欲しいと、きっと役に立つからと思うわけであります。

>『忙しいママでもできる! 毎日の時短ごはん』
田内 しょうこ (著),
現役ママの編集チーム まちとこ (編集)
<辰巳出版>
【Amazon】https://www.amazon.co.jp/dp/4777817555/
【楽天】http://books.rakuten.co.jp/rb/14380673/

ちなみに何故アマゾンや楽天のリンクを貼るかというと、この本が必要な「忙しいママ」には、本屋に立ち寄る時間なんてこれっぽっちも無いからです。そりゃ小売店も苦戦するし、奥様方もどんどん恐ろしくなるわ。

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どこかの駅の啓文堂。
忙しいワーママでも、駅の本屋さんになら、どうにか立ち寄れる!?

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編集チーム「まちとこ」の面々の、現場への足はこれ!

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「忙しいママでもできる! 毎日の時短ごはん」深夜の原稿執筆で、ますますおっかない奥さん。スワローズの試合結果を見て、怖い顔をしているわけではない(と思う)。




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2016年07月10日

『国のない男』

そしてヴォネガットの遺作となった『国のない男』再読。悲しいかなドンピシャのタイミング。2005年の本。なにが9.11の巨大テロを引き起こしたのか、その後の利権と嘘にまみれたイラク戦争を目の当たりにして、自身が幼い一兵卒として体験した第二次大戦の記憶を手繰り寄せたりしながら、人間の愚を大いに嘆くのだけれどもユーモアを決して失わない寛容な知性というのだろうか。すばらしー

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願わくば、わが連邦政府を、ひいては全世界を乗っ取った連中、それもミッキーマウス的クーデターによって乗っ取った連中、そして憲法によって据えつけられた防犯装置をすべて外してしまった連中(憲法というのは、言い換えれば、議会であり、最高裁であり、われわれ国民なのだが)、そういった連中が本当にクリスチャンでありますように。しかしウィリアム・シェイクスピアも昔こう言っている。「悪魔も聖書を引くことができる。身勝手な目的にな」[『ヴェニスの商人』第一幕第三場]
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この本でヴォネガットが主に書いているのはその後ますます泥沼化してゆくアメリカの当時だけど、恐ろしいくらい今の日本に通じる内容に思えてしまう不思議。
ものすごく内省的な眼差しでもある。おすすめ。

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