【PREMIER SELECTION SHOW】とのことですが、ぼくの作品もいくつか展示されます。
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Tobin Ohashi Gallery
ギャラリーオープン記念
PREMIER SELECTION SHOW
http://www.tobinohashi.com/
■ 2010年9月29日〜10月30日(休廊:日・月)
■ 13:00〜21:00
■(9/29・30のオープニングレセプションは、18:00〜21:00)
場所: 東京都中央区日本橋横山町1−4
※ MAP: http://www.tobinohashi.com/wp/ja/location/
お問い合せ: 03-5695-6600 or 080-3252-7782
hhh@gol.com
大橋人士/Hitoshi Ohashi
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Tobin Ohashi Gallery
ギャラリーオープン記念
PREMIER SELECTION SHOW
http://www.tobinohashi.com/
■ 2010年9月29日〜10月30日(休廊:日・月)
■ 13:00〜21:00
■(9/29・30のオープニングレセプションは、18:00〜21:00)
場所: 東京都中央区日本橋横山町1−4
※ MAP: http://www.tobinohashi.com/wp/ja/location/
お問い合せ: 03-5695-6600 or 080-3252-7782
hhh@gol.com
大橋人士/Hitoshi Ohashi
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宜しければお誘い合わせのうえご参加ください。お待ちしております。
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このギャラリーは、大橋さんとボブさんという気持ちの良いお二人が運営しているギャラリーで、元々は Asian Collection Comtemporary Art Gallery という名前で麻布十番にあった。2007年に僕の作品を買ってもらったのが切欠で、その後縁が続いている。
この年初から6月末まで、赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京のロビーにて、僕の作品が展示されてたが、そのアレンジをしてくれたのがこのギャラリーだ。
これまではかなりカジュアルな趣のスペースにて、グループ展や企画展を中心に展示をおこなってきたギャラリーだった。今度はここ最近わらわらと現代美術ギャラリーが移転し、新たなランドスケープを形成しつつあるエリア(浅草橋、東神田、岩本町、馬喰町界隈)に場所を移して、所謂ホワイトキューブの形のギャラリーとなるようで、どう発展してゆくのかがとても楽しみ。オーナーの人柄というのは、なによりギャラリーの雰囲気に影響するものなので、新しいこのスペースも、かなりカジュアルな空気が流れるのではないかと期待しているが、移転の準備に取り組んでいる大橋さんから、なんとなく「満を持して」という気配が漂ってきており、それがまた興味深い。
なんで興味深いかと言えば、元を正せばこのボブさん大橋さんの二人組は、たぶん純粋なアート愛好家だったということがあり、業界やアカデミズムとしてのアートとはまたちょっと異なった純粋な嗜好性にドライブされているのではないかと感じるというのがひとつと、それからオーナーの一人であるボブさんというのが某大学のビジネススクールで教鞭をとる教授だということがあって、これも所謂アートの文脈の外にもひとつ大きな視座を持っているというのがもうひとつ。視座も然りだけど、持っているチャンネルもまた、アートの主流とは若干異なるということがある。そのチャンネルについては例のリーマンショック以前以降で、主に外資金融関係の筋での非常に判り易い変化があったようで、それを間接的に体験できたのは面白かった。要は彼等はそもそも成り行き的に、主に外資の投資銀行家筋を相手にアートコンサルをしていきた人達じゃないかと、話を聞いてきた限りでは思うけどもしかしたら勘違いかも。とにかく元を正せば異業種に身を置く個別のアート愛好家だったのが、紆余曲折あって好きなアートを仕事にしてしまいました、というような流れはとても良いと思う。
彼等との関わりのなかで、世間/社会と美術というテーマをまたいだ話をする機会がたまにあるけど、それが面白いんだよね。ボブさんに学者の視点があるっていうのも面白いな。ぼく自身が海外と国内を繋ぐ立ち位置での出版の仕事に従事していることから、例えば“Japan Passing”という言葉がリアリティを持って感じられる状況を肌で体験しているなかで、その言語の意味するところの本質性とその現象との狭間で体感している、体験を伴わないと感じることのできないリアリティを、ビジネスのフィールドだけではなく、美術の創作活動の一側面からもその現象を体験できたことは興味深かった。ところでそれはそれとしてジャパニーズポップアートって、それはそれで根付いた何かになってるみたいだけど、外国でも。日本人てなんというかポップなセンスが良いんだろうな。
さておき、ボブさん大橋さんとの話になると、例えばそんな経済と文化などが関係しあって現状があんなやこんなになっているのか、という問い掛けに対する解というか意見にダイバーシティがあって、議論として刺激的。
「蛇の道は蛇」や「餅は餅屋」の慣用句もあるので、アートのある種クローズドな世界で、このギャラリーの異端としての立場がどのように物事の構築に響いてゆくのかということに興味がある。現場を仕切っている大橋さんは、本気でアートを生業としてしまった、元メイクアップ・アーティスト。
ぼく自身が言ってみれば日本のアートの文脈では、というかまあその定義そのままにアウトサイダーアート(とかアール・ブリュット)と規定されるような立場から自生的表現を続けてきたということもあって、数年前から所謂アートの業界的文脈に触れる機会を得てきたなかで、その業界の特有の性質に対して違和感というものも感じたし、その業界が存在することによってしか成立しない素晴らしいあれこれも垣間見てきたと思う。そんななかでひとつ衝撃的だったのは、当初マネージメントを預けていたアートの事務所の代表から、アートの話になると「アートの世界は特別なんです」と繰り返し何度も言われたこと。そうかもしれない、という思いと、いやいや、家電の世界もアパレルの世界もコンテンツの世界も共通するあれこれがあるでしょう? という思いがその都度交錯した。共通する前提を踏まえたその上で、アートの世界の特異性を語っているのか、もしくはアートの世界の特異性だけを基準として世の中を見ることを無意識的におこなっているのか、そこの判断ができなかった。というか、打ち合わせや、もっとカジュアルな会話を通じては、むしろ後者なのではないかと感じたことも少なくなかった。それぞれの業界や世界が固有の文脈やら性質やらを持っていると言うのは承知したうえで、アートに関わったからこそアートの幻滅させられそうになった出来事だった。
その人の言う通り、もしアートの世界が特別なのであれば、その特異性を見る為には内部にも首を突っ込まないことには発見を得られないわけで、それを試みたのは楽しい経験だったし、まあ今もその試みは進行中かもしれない。
潜入調査としては不十分な踏み込みしかできていないのは承知のうえで、今までの経験からはアート世界の固有性/特別性をさして強く感じていない。もしかしたら、日本におけるアートマーケットの狭さが、それ故の相対的な帰結として発信者および受信者の個性を際立たせて、というか目立たせているというのはあるかもしれない。そして個性が際立たなければいけない世界というのは、不便かもしれないが決して悪いものではない。その不便さゆえにネゴシエーターとしての仲介者の持っている立場と力量がはっきりと出てしまうというのはあるかもしれない。それを指してその人が「アートは特別な世界だ」と言っていたのであるとすれば、まあそうかもしれない。
で、今回の Tobin Ohashi Gallery に何を期待しているのかと言えば、そのアウトサイダー/インディーズの立場を持ってメインストリームに打って出ると言うハプニング的な面白さであり、その面白さゆえにアート本来の自由が担保されるのではないかということだと思う。
まああらゆるギャラリーがインディーズであるのは間違いないんだけど、例えば僕が感じたのは“正規の”美術の文脈というかステップを踏んだうえで成立する物事により重要な価値を見いだしている業界内の人々から醸し出される、その限定的な雰囲気というのがあって、それはそれでリスペクトすべきものなんだけど、まあそれだけだと面白くもないし一般化もしにくいよな〜ということだったと思う。一般化しにくいから、クローズドな世界になっちゃっているというのもあると思う。
好きな言葉ではないけれども、ハイアートとローアートのようなものが仮にあるのだとしたら、ミドルアートというものを探って、そこに居心地が良くってレンジの広い世界を作ってみたいなぁ。ファインアートというのは判るけど、ハイアートというのは感情的にちょっと……なんだよな〜。その対比としてのローも勿論……で。
生産と、流通/消費の狭間にあってその中間的役割を果たせるということはどういうことなのか、ぼくは人々が文字にして紡ぐ出版コンテンツを仲介させてもらうという立場にあって、常に頭から離れることのないテーマでもある。プライマリーなギャラリーと言うのは、視覚的美術の文脈のなかにあって無くてはならない中間的存在であり、同時にギャラリーがその存在感を持つためには独自性が要求される。その独自性というのは何に保障されるのかと言えば、そこを商う人そのものであると思うし、そこに割くことのできる労働の総量ではないかと思う。
ぼくは今回、新装の形でオープンする Tobin Ohashi Gallery については、この人達がまた本気でなにかを試そうとしているのではないかと感じているので、その出発点が“アウトサイド”の自由度の高さがあるからこそ起きるかもしれない地殻変動に興味と期待を持っている。
「ほーほーホタル来い」の歌ではないけど、「こっちの水は甘いぞ」と言える人達のところに、ホタルは集まるものだと思うので、業界の性質や固着性に囚われずに、甘く面白い空気を醸して行って欲しいなぁという期待があるし、またそういうカウンターを当てることによって、封建的な価値基準に物を当てていって欲しいなあという思いもある。この人達にはそれができるのではないかな〜と感じており、ぼくも一枚噛ませてもらっている次第。それが自分の性質とも状態とも合致する。
ということで、そのオープニングの二夜については楽しみにしています。
良かったら様子を見にきてくださいね。